今日は小雨が降ったり止んだりの1日だった。あまり雨が降らないカラッとした夏に比べて、大体この時期は毎度こんな感じ。
昼から友人とグラン・パレに行く予定をしていたので、その近くでブランチをしようと、レストランをネットで探して行き着いたのが、Kozy Bosquet。エッグ・ベネディクトやパンケーキがメインのオシャレ系。大人気店のようで、雨の中並ぶ羽目に。昨日の「アンジェリーナ」は観光客が大半だったが、今回の店は地元人らしきフランス人が多かった。
右に見える青い店に入るために並ぶ人たち
30分程並んでようやく入れた。店内はやはり、比較的若い人が多かった。
グラン・パレは3年間の改修工事の為閉まっているが、今は仮設で写真展「Paris photo 2023」をやっている。絵画にはほとんど興味ないが、写真は結構好きなので、行ってみることにしたのである。本当はグラン・パレの建物を見たかったのだが。
入口
展示会場の中にはこんな洒落たカフェがある
よーく見ると亡霊のように僕が写り込んでいる
これを見て「美味しそう」と言った友人……
世界各国の写真家たちによる、おびただしい数の写真が展示してあったが、なかなか面白かった。もちろん、日本の写真家による作品もあった。
3時過ぎに友人と別れた後、モノプリ(スーパー)に入ると、またまた防犯ブザーが鳴る。昨日に引き続き何なんだ!入口に警備員がいて荷物チェックされたので、今回こそ原因を突き止めてやろうと、ありとあらゆる所持品を防犯システムに通してみたが、どれも鳴らない。おかしいなぁ、と思っていたら、警備員が「着ている服にまだ防犯タグが付いているのでは?」と言うので、「あー!それかも!」と納得がいった。今回持って来ている服のほとんどが今年の夏にフランスで買ったもので、今回の旅で初めて袖を通している。普通は購入時に店員が防犯タグを切ってくれるのだが、ここは適当なフランス、切り忘れていても不思議ではない。アパートに戻り服をチェックしてみたら、案の定、それと思われるものが付いていたので、持って来た服すべて確認して、付いているものは全てタグらしきものを切り外した。その後再度、別のモノプリの店舗に行ってみたら、ようやく防犯ブザーが鳴らなくなった!原因が分かりホッとする。
明日からノルマンディー地方のル・アーヴルに4泊するので、持って行かないものを全てスーツケースに詰めて、再度パリに戻る金曜日から宿泊するホテルに、スーツケースを預けに行った。これでノルマンディー旅は身軽である。スーツケースを預かってもらったホテルは、パリの外れにある近代的地区の、超オシャレな高層ビルに入っている。夜景が期待できる。が、ちょっと交通の便が悪い。フロントの人たちはエレガントかつフレンドリーで、その中の男性が日本語で「いらっしゃいませ」と言ってきた。彼が「日本語学んでるんです」と(フランス語で)言うと、別のスタッフが、
「お客様、聴いてください。この人、そんなこと言ってるけど、知っている日本語はYouTubeで学んだそれだけなんですよ」
なんて言うと、件の彼はこう切り返した。
「いいえ、そんなことないです!金曜日までにもっと練習しておきます!」
スーツケースを預けてから、中心部に戻るのに地下鉄を乗り継いで行くのが面倒に感じ、バスに乗った。最近はバスがお気に入りである。パリの地下鉄は案外中で歩く距離があるし、しかも古くて汚いし臭い。なので、清潔でパッと乗れるバスがいい。サンジェルマン・デ・プレ方面に向かうバスに乗ってしばらくすると、運転手が「デモの影響でルートを変えます。次はモンパルナス駅まで止まりません。降りる人はここ(オーステルリッツ駅)で降りてください」と言う。一瞬迷ったがそのまま乗ってモンパルナスまで行き、そこから地下鉄でサン・ジェルマンまで行くことにした(結局地下鉄に乗るハメに)。まぁとにかく近年、フランス(特にパリ)は、常に何かしらある。今日はユダヤに関連したデモがあったのだ。デモは事前に時間もルートも予告されるので、その区域を外せば危険はそれなりに回避出来、街は何事もないようにいつも通り平和そうに賑わっている。
サン・ジェルマンで行き着けの店で食事をした後、バス停に向かって歩いていたら、若い男性に「すみません、ちょっといいですか」と呼び止められたので、「はい」と応じた。すると、隣にいる彼女らしき人を指差し、
「この女性、とても綺麗だと思いませんか?」
と僕に訊いてきた。「ええ、もちろん、綺麗ですよ」と返したら、
「ですよね!今日はとりわけ美しいんです」
隣の彼女は恥ずかしがりながらうつむいて微笑んでいた。彼は僕に「ありがとうございました」と言って、短いインタビュー終了。フランス語だったが、フランス人とは違う外国人訛りがあったので、他のヨーロッパから来た観光客だったのだろう。内容はどうであれ、珍しく英語ではなくフランス語で話しかけてきたこと、そして最近の現地の若者っぽくない、丁寧な言葉遣いに感心(丁寧なのはネイティブじゃないからか)。毎度のことながら、レストランなどに行くと、どこでも自分の母語が通じると思っている英語圏の人たちと、自分を含む非英語圏の人たちのメンタリティーの違いと、その不平等さにモヤモヤを感じてしまうのだ。
バスで帰って来るつもりが、これまたデモの影響でルート変更していた為、諦めて地下鉄でアパートに帰った。帰ってすぐにシャワーを浴びるものの、数分後には冷たい水しか出なくなった。初日は問題なかったのだが、昨日も今日もこのザマである。フランスのシャワーは水圧が弱かったり、お湯が出なくなったりと、水回りのストレスは多い。このアパートのお湯問題は設定の問題なのかもしれないが。
このアパートは今日で最後なのでホッとする。明日からのル・アーヴル4泊はヒルトン、その後のパリ2泊は超近代的ホテルなので、とりあえず水回りは問題ないだろう。この何年か、フランス旅の際は好んでアパート泊にしていたが、最近はアパートのデメリットを感じ、ホテルのほうが気楽に思えてきた。このアパートは、立地もいいし清潔で、オーナーもとても親切なのだが、暖房とシャワーがストレスだった。というのも、初日、セントラルヒーティングのお陰で部屋は暖かったのだが、夜遅くなるとなぜか寒く、暖房機を触ったら冷たくなっていた。どうせ寝るからいいやと、特に気にせず寝たのだが、朝も寒い。しかし、スイッチをどうひねっても暖かくならず困っていたら、なぜか突然暖かくなった。
2日目も同様で、夜寒いので沢山着込んで凌いでいたが、風邪を引くのもイヤなのでオーナーに連絡したら、セントラルヒーティングは23時から7時までは自動的に止まるのだそう(恐らくこのアパート全体の設定)。なので、寒い場合は、テーブルに乗っている小さくて黒い暖房機を使うようにとのことだった。それで確かに暖かくはなったが、ただでさえ乾燥しているのに、朝起きると口の中がカラカラ!
こんな小さな機器が部屋を暖めてくれるとは!
シャワーは扉が半分なくて水が飛び散るし、すぐに冷水になる。オーナーに言おうと思ったが、もうどうせ最終日だし、明日からは快適なシャワーが待っているはずだから、もう面倒臭くてシャンプーだけで終わらせた。あーイライラ。
それと、このアパートはとても立派で、立地からしても結構お金持ちが住んでいると思われるが、他のアパートの例に漏れずとても古い建物。これがいかにもヨーロッパなのだが、僕は毎度、その古さがちょっと怖い。エントランスや廊下が不気味に思えてしまう(フランス渡航歴25年のいまだに)。
アパートの外観
エントランス
エントランスホールの先にまた扉
その先の扉の向こうに中庭がある
エントランスから中庭に抜けて部屋に辿り着くのだが、夜はその中庭が真っ暗なので、これまたちょっと不気味なのだ。銅像もあったりして、暗闇の中、なるべく銅像は見ないようにする。もしかしたら電気のスイッチがどこかにあるのかも知れないが……。近代的なマンションがいいと言うなら、郊外に行くしかないし、古い街並みを彩る昔ながらのアパートの建物にも憧れがなくはないのだ。矛盾しているけど!
中庭に出るとこの銅像が目に入る
実際は怖くはないのだが、暗闇だと怖い
通り過ぎて振り返ると、後ろ向きの銅像が見えてまた怖い
暗闇の中、チビリそうになりながら、中庭の奥にあるこの扉の鍵を開けて2階に上がる
部屋の窓から眺める中庭(前述の不気味な庭とは違う)はパリっぽくて風情があって良い!
で、話を戻すと、来年のテレワーク時のアパート探しをせねばならず、もしこのアパートが気に入ったらここにしようと思っていたが、広さや快適さからすると、ここはあっけなく候補から外れた。アパート選びは本当に難しい。写真だけでは分からないことが多すぎるので、一か八かなのだ。
とはいえ、何だかんだ言いつつも、決して悪い部屋ではないので、それなりに楽しく過ごせた3日間に感謝!