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ダイビングの日程を全て終えた翌日から仕事だったので、その夜、タクシーでホテルを移動しなければならなかった。そこで、4年前にプーケットで親切にしてくれたタクシードライバーのヨーさん(2011年のプーケット旅行記参照)に、恩返しの意味も込めて頼もうと思っていた。プーケットに着いた翌日から、ヨーさん探しを開始。4年前にヨーさんと会った、タクシードライバーが集まっているところに行ってみるも、見つからない。そもそも、顔をよく覚えていない。それに、タクシードライバーなのだから、常に同じ場所にいるとは限らないし、別の仕事に就いている可能性もあるわけで、あてもなく街中を歩きまわって探すのは無謀に思えてきた。一番いいのは、4年前に貰った名刺に書いてある番号に電話することなのだが、英語が得意でないタイ人と電話で英語を話すことに躊躇いがあった・・・がしかし、そんなことも言っても仕方ないので思い切って電話をしてみることにした。

番号が変わっている可能性もあったが、電話は繋がった。「ヨーさんですか?」と訊ねるとそうだと言う。僕は「覚えていないかも知れないけど」と前置きをして、4年前に会った日本人で、帰り際に自分のCDを手渡したことなどをざっと話したら、なんとなく覚えているようだった。今回仕事でプーケットに来ていること、仕事前にダイビングをしていること、ダイビングを終えたら仕事で滞在するホテルまで移動しなければならないこと、そのホテル移動にあたりヨーさんのタクシーを使いたい旨を伝えたら、OKしてくれた。もし時間的に可能なら、前回のお礼も込めて夕飯を奢ろうかとも考えていた。ヨーさんは英語がそんなに得意ではないので、聞き取れないことも多々あるのだが、4年前のプーケット滞在を良き思い出にしてくれたヨーさんに再会出来ることを心から楽しみにしていた。

ダイビングの日程をすべて終え、夕方、港からホテルまで戻る道中、かなり渋滞していた為、ヨーさんとの待ち合わせ時間に遅れそうだった。これが予想を遥かに超えた渋滞で、ホテルに着くまで2度もヨーさんの携帯に電話することになった。ヨーさんは落ち着いた声で「OK」と言いつつ、車のナンバーを伝えてきた。そのナンバーが最初伝えられたナンバーと違うことが気がかりではあったが、いつもの如く、彼の英語が分かりづらいこともあり、要点以外は聞き流していた。

当初の約束時間から20分程過ぎてやっとホテルに着くと、電話で伝えられたナンバーの車が停まっていた。小走りでその車に近づき、4年振りの再会の挨拶をしようとしたその瞬間、我が目を疑った。車の窓から顔を出してきたのは、ヨーさんとは似ても似つかない、全くの別人の男だった。年は僕より少し下だろうか(ちなみにヨーさんと同じくらいの年齢だろう)。聞けば、その男はヨーさんから頼まれて来たのだと言う。しかも助手席には彼女らしき女が座っている。事情が分からず、一気に不信感が募り、ヨーさんから裏切られたような気分になった。
「なんでヨーさんが来てないの?」
「ヨーさんはアクシデントで来られなくなったから、代わりを頼まれたんだよ。ボクはヨーさんの友達だから、ダイジョウブ!」
この男も英語があまり話せずカタコトだった。しかし、いきなりそんなことを言われても困る。
「そもそもそのアクシデントって何?ヨーさんは来ないの?なんで?」
「ヨーさんは空港に行ってて、今、渋滞に巻き込まれてて来られなくなった。で、あなたの行きたいそのホテル、何ていう名前だっけ?そこにはボクが連れて行くから」
「どこに行くかも知らないの?」
「Sirayでしょ?そのホテルの場所は知らないけどダイジョウブ!」
「おいおいおい、場所を知らないでどうやって辿りつけるんだよ!」
「Sirayにはでっかいホテルがひとつしかないから、行けば分かる!ダイジョウブだよ!」
「なんだそれ・・・そのホテルの名前さえ知らないのに本当に行けるのか?」
「ダイジョウブ!そのエリアには大きなホテルがひとつしかないんだから」
「信じられない・・・!!」

不信感が増す一方の僕に、その男も困った顔をする。そもそも僕はそのホテルに辿り着けるかどうか、ということより、ヨーさんとの再会を果たせないことにショックを受けていた。するとその男はヨーさんに電話をし、僕に電話を寄こしてきた。ヨーさんは電話口で、「渋滞で行けなくなったから、その人に頼んだんだ」と言う。このまま話しても状況は変わりそうになかったので、電話は切った。ヨーさんが来ないなら、別にこの男のタクシーに乗らなくても別にいいわけで、なんだか面倒になってきて、キャンセルしたい気持ちで一杯になった。
「それで、幾ら?」
「幾らなら払える?」
「さっきヨーさんは1,000バーツ(約3千円)って言ってたけど、700(約2千円)でも行ける?相場は分からないけど」
「うーん・・・いいけど」
「で、領収書はくれるの?」
「リョウシュウショ・・・?ナニソレ???」
「領収書知らないの?」
「リョウシュウショ・・・ワカラナイ」
「お金を払ったら、その支払いの証拠になる紙のことだよ」
「・・・ん?」
彼は簡単な英語でないと理解できないので、噛み砕いて言う必要があったのだが、簡単な単語を並べて喋っているうちに、自分でも何を言っているのか分からなくなってきた。領収書を貰えるのか貰えないのか、という質問ひとつに結構時間を費やしていて、こんなところで何を議論してるんだろうという気持ちになって来た。腹も減っている。いっそのこと、もうキャンセルして、僕は夕飯を食べに行きたい。腹も立っている。
「キャンセルしていい?」
「キャンセル?!・・・いいけど・・・でも、700バーツでもいいんだよ、1,000じゃなくても」
「んじゃあ、領収書くれる?」
「うん、途中コンビニに寄って領収書買うよ」

僕が乗るか乗らないかで、彼に今700バーツが入るか入らないかが変わる。そもそも、僕は何に対して腹を立てているのだ?よくよく考えたら、この男には何の罪もないのだった。ヨーさんが来ないことに対して、僕がただ八つ当たりしているだけのようにも思えてきた。彼自身は言われた時間に言われた場所にやってきて、客が来たかと思ったら「なんでヨーさんが来ないんだ?」というクレームから始まり、30分以上も議論している。彼にとってもいい迷惑のはず。そんな風に思ったら、無碍にキャンセルするのも可哀想に思えてきて、
「金額は700バーツ。領収書はくれる。で、今腹が減ってるから、マクドナルドに途中寄ってもらえる?」
「オーケー!!じゃあ、行くってことでいいんだね?」
ようやくその男も顔がほころび、握手を求めてきた。僕も気持ちが落ちついたら申し訳なくなってきて、一言謝った。

しかしながら、いくら治安のいいプーケットといえども、この男が本当に信頼できる人なのかどうかは分からず、警戒心はあった。途中、マクドナルドに寄ってもらい、テイクアウトしてすぐ車に戻るはずだったが、スーツケースを車に預けたまま、僕が買っている間に逃げられたらどうしよう・・・と気が気でなくなる。ハンバーガーを手に急いで店を出る。車は消えていなかった。ホッとする。ポテトをあげる。

次の疑念は「本当に途中のコンビニで領収書を買うのだろうか?」。まぁ、買わなかったら買わなかったで、別に領収書は要らないか、とも思ったのだが、そういう問題ではなく、「領収書を途中で買って、きちんと書くから、安心して!」とさっき言った言葉が嘘だったら・・・と思うと、またちょいと恐くなる。まぁしかし、繁華街を越えたところのコンビニで領収書を買ったので、一安心。

更に次の疑念は、40分くらいで着くと言いながら、なかなか着かないことだ。しかも真っ暗な地域に入り、とうてい観光客が行くような場所とも思えない。まぁ、確かにそのホテルは外れにあって、しかも海沿いのデカいホテルなのだから、中心街からかなり離れていることは想像に難くないのだが、本当にちゃんと連れて行ってくれるのか?という猜疑心が沸き起こる。もし、変なところに連れて行かれたら・・・・・・いやいや、まさか、そんなはずはない・・・

などと、ひとり勝手に妄想を繰り広げていたが、1時間を過ぎた頃、ようやくホテルに辿り着いた。この男と会ったその瞬間から始まったすべての猜疑心を反省し、700バーツと書いて手渡してくれた領収書と引き換えに、僕は800バーツを支払った。

日本ではない国で警戒心は必要不可欠だし、僕も毎回のように「この人、大丈夫だろうか?」と疑ってかかりながら、実際は良い人だったというパターンが多いけれど、やはり、日本人はカモにされやすいし(今回のタクシードライバーは僕が何処の国から来たのかさえ知らなかったようだが)、簡単に人を信じてはいけない。でも、勿論疑ってばかりだとつまらない面もある。ある程度のバランスを保って、地元の人たちとのコミュニケーションを楽しみたいものだ。
| 旅行 | comments(2) |
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私も、海外ではまず疑ってかかりますね。
そして、実は本当に親切だった・・・・という事ばかりでしたけど。

でも、いつも緊張感を持っているほうが正解だと思うのですが・・・。
| みゅげ | 2015/02/09 9:17 AM |
>みゅげさん
確かに、学生時代しょっちゅう旅行してた頃は(ヨーロッパばかりですが)、旅の数だけ変な人にも出会いました。
幸いひどい目にあったことは一度もないのですが。
緊張感は絶対に必要なんですけど、東南アジアにも出向くようになったここ数年、めちゃくちゃ疑った後に「いい人」だったと分かると、「悪かったなぁ」とも思うのですが、それでも自分の身を守る為にも仕方ないことですね。

実際、いい人のフリして悪人も沢山いますからね!
| 高橋功 | 2015/02/09 10:20 AM |







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